【はじめに】
月経前症候群とは、一般的には月経前の3~10日前後の日程で続く精神的あるいは身体的症状の総称を指しており、月経開始とともに症状が軽快または消失するものを意味します。
例えば、精神神経症状としては情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、睡眠障害などが挙げられます。
また、自律神経症状として、のぼせや食欲不振、めまい、倦怠感などを自覚するケースもあります。
身体的症状としては腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、そして乳房の張りなどの訴えがよくありますし、精神状態が強く前面に出るような場合には、月経前の不快な気分障害を認める場合もあります。
そして、マグネシウムは特に、脳や心臓、そして筋肉部位において重要なミネラルであり、不足すると月経前症候群につながりやすい栄養素であることが分かってきております。
そんなわけでマグネシウムは生体にとって必須多量ミネラルですので、いかにして必要量を摂取するかがこれまでの課題でしたが、てっとり早く摂取するにはサプリメントの利用があります。
今回は、月経前症候群にならないためにマグネシウムのサプリメントを摂取する重要性などについて説明していきます。
【第1章】月経前症候群とは?
通常では、女性には25~38日間の性周期があり、月経の始まりから次の月経までが1つの周期的なサイクルとなっています。
まず性周期の前半部分では、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンというホルモンが多く分泌され、卵巣内の卵胞が成熟する「卵胞期」というフェーズになります。
そして、性周期前半が開始されてちょうど14日目頃に成熟した卵胞から卵子が排出される運びになります。
排卵後には妊娠に備えて黄体からエストロゲンとは異なるもうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンが生理的に多く分泌されるようになります。
この時期は「黄体期」と呼ばれ、二週間ほどして妊娠が成立しなければ、妊娠のために準備された子宮内膜が剥がれ落ちて月経が生じて、次の性周期に移行することになります。
月経前症候群では、月経前にありとあらゆる症状が毎月現れて、基本的には月経開始後には和らぐことが特徴的とされています。
月経前症候群では通常月経が開始する3~10日ほど前から身体的、精神的に現れる不快な症状を呈します。
そして、これらの症状は月経が開始すると同時に改善するのが特徴的です。
月経のある女性の大部分は月経前に何らかの不快症状を感じると一般的に言われていますが、日常生活に支障を来すほど重度の症状を認める場合には月経前症候群と思われます。
軽度な場合には、生活習慣の改善などで症状がよくなることも多いです。
我が国では月経周期を有する女性の約80%が月経前に何らかの症状があると言われています。
それらの何らかの症状が、生活に困難を感じるほど強い程度を示す女性の割合は約5%程度と伝えられています。
また、特に思春期ごろの女性では月経前症候群の頻度がより多いとの報告もあります。
人によって大きく症状が異なる本疾患の原因ははっきりと判明していませんが、排卵後に訪れて月経前の黄体期に分泌される女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に変動することによって発症と深く関わっているとも考えられています。
これらの黄体期の後半にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が急激に低下することによって、脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、月経前症候群を引き起こす原因と思われます。
脳内のホルモンや神経細胞に関連する伝達物質はストレスなどの影響も受けるため、この疾患は女性ホルモンの低下だけが主因ではなくて多くの様々な要因から発症すると考えられます。
また、月経前症候群にならないためには日常的に出来るだけカルシウムやマグネシウムを積極的に摂取し、カフェイン、アルコール、および喫煙習慣は控えたほうがよいと言われています。
急な環境の変化や、ハードワークによる緊張状態が続いた時など、ストレスがたまっていると、月経前症候群の症状を自覚しやすくなります。
このような背景があるがゆえに、月経前症候群にならないために事前に予防するためには、マグネシウム不足を普段から意識しながら改善する必要があると言えるでしょう。
【第2章】月経前症候群にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性
過去の研究知見から、月経前症候群が認められる女性は認められない女性に比べ、赤血球と白血球に含まれるマグネシウムが少ないと言われています。
マグネシウムは主に細胞内に存在しており、血管収縮や神経筋機能および細胞膜の安定性に貢献するのみならずセロトニンや他の神経伝達物質の作用にも関与しているため、月経前症候群に影響を及ぼしていると想定されています1)。
月経前症候群は一旦重症化すると著しい気分変調を来す気分障害と呼ばれる精神疾患のひとつとして捉えられることもあり、抗うつ薬などの使用が必要となることも多いことから可能な限りは事前に月経前症候群にならないために工夫して対策を講じることが重要です。
そのためには、普段から規則正しい日常生活を心掛けて、マグネシウムなどのミネラルを含めてバランスの優れた食事を摂取するように意識して取り組むと同時に、マグネシウムサプリメントで補うのも良いと考えられます。
マグネシウムそのものは推奨摂取量(最大400mg/日)が規定されており、また経口マグネシウムサプリメント自体は成人1日あたりで約350 mgの摂取量以下であれば安全域と考えられています2)。
また、月経前に情緒不安定になっているのは、神経が緊張し興奮している状況が考えられると同時に、女性ホルモンのバランスも乱れているかもしれません。
したがって、コーヒーや紅茶などのカフェインが多量に入っているものを控えて、情緒不安定を和らげる作用を有するビタミンB群、カルシウム、マグネシウムなど治療用サプリメントによる栄養成分を前向きに摂取するように心がけましょう。
【まとめ(おわりに)】
多くの女性にとって、月経前症候群は回避できない毎月の迷惑行為のようなものですよね。
不合理な感情の爆発、誰に対しても生じるイライラといった症状が現れて、理性でその兆候に応え続けることはさらに月経前症候群を助長させていることになるケースもあります。
そんな時には、ホルモンを正しく調整しながら、月経前症候群による症状を軽減してくれる食べ物やサプリメントを通じてマグネシウムを摂取することで不快な思いから解放される期待が持てます。
日々の食事内容やサプリメント栄養をうまく活用してマグネシウムの摂取方法を工夫することによって月経前症候群にならないように努めて実り多い快適な生活を送りましょうね。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- Facchinetti F, Sances G, Borella P, Genazzani AR, Nappi G. Magnesium prophylaxis of menstrual migraine: effects on intracellular magnesium. Headache 1991;31:298-301-
DOI https://headachejournal.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1526-4610.1991.hed3105298.x
2)Guerrera MP, Volpe SL, Mao JJ. Therapeutic uses of magnesium. American Family Physician 80:157-162, 2009
DOI http://www.aafp.org/afp/2009/0715/p157.html
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。