【はじめに】
深部静脈血栓症は、静脈の内皮障害や血液の凝固亢進、あるいは静脈の血流停滞によって特に下肢静脈に血栓を形成し、その静脈血栓が肺動脈を閉塞することで呼吸循環障害や突然死の原因となる肺動脈血栓塞栓症を併発する重大な病気です1)。
そして、マグネシウムは補酵素として生体内において300種類以上の酵素の働きを助けていると同時に、エネルギー産生機構にも深く関わっており、栄養素の合成・分解過程の他にも血小板の凝集を抑えて血栓を作りにくくしたりする作用効果もあると言われています。
生命の基礎ミネラルとも言えるマグネシウムが不足すると、様々な体調不良を引き起こし、深部静脈血栓症やエコノミークラス症候群などの血栓症を罹患する可能性が考えられます。
マグネシウムは昔ながらの日本食では豊富に摂取できるものが多いとされていますが、その一方で複数のミネラルやビタミンを同時に補うことができるサプリメントなどの健康食品によってマグネシウム成分を摂取するケースも最近では散見されます。
近年では効率よく簡便にマグネシウム成分を補うことができるマグネシウムサプリメントやマグネシウムクリームという製品を日常的に活用する人も数多く存在しています。
今回は、深部静脈血栓症にならないために普段からマグネシウム製品を取り入れる重要性などについて説明します。
【第1章】深部静脈血栓症になる原因とは?
深部静脈血栓症とは、一般的には下肢や下腹部に存在している深部静脈と呼ばれる血管に血の塊が形成される病気を意味しています。
本疾患における主な症状は下肢の腫れや痛み、皮膚の色調変化などが挙げられており、さらに血の塊である血栓が足の静脈の壁から剥がれて心臓や肺に到達すると肺塞栓症を発症して呼吸困難などの重篤な状態を引き起こします。
この病気は、健常者よりも体質的に血液が固まりやすい、静脈瘤等があり静脈内血流が悪い、静脈の壁が傷つきやすいという三つの条件が重なった際に引き起こされると言われています。
深部静脈血栓症では、通常入院中で寝たきり期間が長い患者さんや航空機などで長距離移動をする場合によくみられることが知られており、特に旅行者に発症するものをエコノミークラス症候群と呼んでいます。
これらの状態においては、長い時間をかけて足を動かすことがないために足の血液の流れが悪くなることによって、足の静脈のなかに血栓と呼ばれる血の塊ができやすくなります。
足にできた血栓は歩行動作などを契機にして、突如として血液の流れに乗って肺まで到達することがあります。
そして、肺に到達した血栓が肺の血管を塞いでしまうと、胸の痛みや息切れなどの症状が現れるようになります。
これら以外にも、手術などの処置によって長期的に安静を強いられる人、妊娠中あるいは大きい子宮筋腫があって主要静脈が圧迫されることが予想される人では血栓が形成されやすいと思われます。
また、ギプス固定をしている人、がん治療を受けており血液凝固異常がある方などにおいても本疾患の発症リスクが高まると考えられています。
そして、マグネシウムは生体内の約300種類の酵素をサポートする補助酵素としての重要な役割を果たしていることは周知の事実です。
近年ではマグネシウム成分が動脈硬化など様々な疾病・病態とも密接に関連していると考えられており、必要なエネルギー栄養素であるマグネシウムが不足すると深部静脈血栓症における症状を襲来させることに結び付くことになると考えられています。
【第2章】深部静脈血栓症にならないためにマグネシウム製品を取り入れる重要性
仮に深部静脈血栓症を発症した際には、その治療の中心は薬物療法になります。
薬物を使用した治療策では、血液をさらさらにする薬を用いて実践されることが多く、基本的には入院して直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:略してDOAC)と呼ばれる新規の抗凝固療法が可能になっています。
深部静脈血栓症を予防するためには、原則的に静脈の血流を滞らせないようにする工夫や取り組みが重要な観点です。
特に、下肢の血液の循環を良好にするために、寝たきりの状態から出来る限り早く起き上がってよく歩いて下半身を使った運動をする、あるいは脱水にならないように小まめに水分を補給するなどの方法が効果的とされています。
理学的に実践されている予防策としては、下腿部を圧迫する弾性ストッキング、あるいは弾性包帯を装着する方法、そして機械を用いて下肢に周期的な圧力をかけて血流をよくする間欠的空気圧迫法やフット・ポンプ法などが挙げられます。
ただし、深部静脈血栓症では、時に下肢のマッサージが静脈内に浮遊している血栓を飛ばして重症化する可能性が懸念されていますので、マッサージをする時期や具体的な方法についてはかかりつけ医師と十分に相談するように心がけましょう。
そして、マグネシウムは人体内では7番目に多いミネラルであると言われており2)、一般的に昆布やヒジキなどの海藻類、大豆、納豆などの豆類、また干しエビやアサリなどの魚介類、さらにはアーモンドなどの種実類などにマグネシウムは多く含まれています。
マグネシウムは、栄養素の合成・分解過程の他にも血小板の凝集を抑えて血栓を作りにくくしたりする作用効果もあると注目されつつあります。
原則として、マグネシウムなどのミネラルそのものは基本的には体内で十分な量を作ることができませんから、食品などから摂取する必要がありますが、食事などで十分な量を取れない場合には市販で販売されて容易に手に入るサプリメントを活用する方法もあります。
これまでにオーソモレキュラー医学会はマグネシウム摂取の必要性を度々に渡って強く訴えており、極端な緩下作用を生じることなく適切な用量でマグネシウムを取り入れる方法として経皮マグネシウムを推奨しています。
日本人はマグネシウム不足になりやすく、半数以上の方が理想値には達していないことからも、食事やサプリメント以外の方法で毎日でも使用できる経皮マグネシウムクリーム製品が勧められています。
総合的に考慮すると、深部静脈血栓症を予防するためには、普段から意識して食べ物やサプリメント、あるいは経皮吸収型クリーム製品などからマグネシウム成分を摂取する必要性があると言えますね。
【まとめ(おわりに)】
深部静脈血栓症においては、主な症状として下肢の腫れや疼痛症状が挙げられます。
時には、皮膚の色が赤黒く腫れあがる、あるいは深部静脈に存在していた血栓が他臓器に飛散して肺塞栓症に発展した場合には、息切れ、呼吸困難、胸の痛み、冷や汗、失神、血痰などの症状が合併することもあり、最悪のケースでは突然死に至ることもあります。
本疾患において重要な予防策は、決して再発させないことであり、それを実行するためには深部静脈血栓症に罹患した原因を念入りに調べて検索することが勧められ、弾性ストッキングによる治療と抗凝固療法を継続することが重要な視点となります。
そして、マグネシウムは特に脳や心臓、そして筋肉部位において重要なミネラルであると伝えられており、仮に生体内で顕著に不足すると深部静脈血栓症の発症につながりやすい栄養素であるという意見も出てきています。
日々の食事内容やサプリメント栄養、経皮吸収型クリームなどを上手に活用してマグネシウムの摂取方法を工夫することで深部静脈血栓症にならないように実り多い有意義な生活を送りましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- 岡村 優樹, 富園 正朋, 梅橋 功征, 本山 眞弥:深部静脈血栓症患者における下肢静脈径と肺動脈血栓塞栓症との関連. 超音波検査技術. Vol. 44 (2019), No. 5 pp. 573-580.
DOI https://doi.org/10.11272/jss.280
- Masashi Shibata, Kenji Ueshima, Katsuhiko Hiramori, Shigeatsu Endo, Norio Sato, Tomomi Suzuki, Hidehiko Aoki, Tomoyuki Suzuki:The effectiveness of magnesium sulfate medication and the significance of interleukin-6 (IL-6) measurement in coronary reperfusion therapy for myocardial infarction. Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine. 1998 Volume 5 Issue 1 Pages 25-31.
DOI https://doi.org/10.3918/jsicm.5.25
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。