「妊婦・妊娠中のこむら返り・足がつる症状、合併症に対するマグネシウムの効果」研究論文
マグネシウムは、体温、核酸、およびタンパク質合成などを調節するために必要な必須ミネラルであり、神経および筋肉細胞の電位を維持する上で重要な役割を果たすことが知られています。
また、妊娠中の合併症である妊娠糖尿病(GDM)、妊娠高血圧症(HTN)、下肢痙攣(こむら返り)、および妊娠高血圧腎症などを軽減し、出生児体重を増加させる可能性があると考えられており、実際に妊娠中のマグネシウム摂取がこれらの合併症状況に及ぼす影響を評価するために、この臨床研究が行われました。
アメリカ医学研究論文
文献(米国国立医学図書データベース)
Magnesium (Mg) is an essential mineral required to regulate …
妊婦・妊娠中のこむら返り(腓返り)・足がつる原因と予防はこちら
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研究概要
2016年イラン・イスファハン医科学大学において、経口よりマグネシウムを摂取することによりが妊婦が引き起こす合併症である妊娠糖尿病(GDM)、妊娠高血圧症(HTN)、下肢痙攣(こむら返り)、および妊娠高血圧腎症などの状況にどのように影響するかを確認するための実験。(無作為化対照試験)
実験内容
妊娠中(12~14週)の女性180人をランダムに選定。
血清マグネシウムレベルが1.9 mg/dl以上の60人をグループA、血清マグネシウムレベルが1.9 mg/dl未満の妊婦120人をグループB(60人)、グループC(60人)に分け、グループAとグループBには通常のマルチビタミン錠剤のみ、グループCのみマグネシウム300mgを含むマルチビタミン錠剤を、毎日1回、30日間連続投与。
被験者のその後の状況(妊娠高血圧腎症、子宮内発育不全、早産、低体重児、妊娠糖尿病(GDM)、足の痙攣(こむら返り)、アプガー指数)などを記録し、分析。
結果
マグネシウム投与グループCは、全ての合併症を含む状況においてグループA、Bと比較して圧倒的に有意な効果が見られた。
結果 | グループA | グループB | グループC (マグネシウム投与) | |
妊娠高血圧腎症 | YES | 13 (21.7%) | 20 (33.3%) | 7 (11.7%) |
NO | 47 (78.3%) | 40 (66.7%) | 53 (88.3%) | |
子宮内発育不全(IUGR) | YES | 7 (11.7%) | 16 (26.7%) | 2 (3.3%) |
NO | 53 (88.3%) | 44 (73.3%) | 58 (96.7%) | |
早産(Preterm Birth) | YES | 15 (25.0%) | 16 (26.7%) | 6 (10.0%) |
NO | 45 (75.0%) | 44 (73.3%) | 54 (90.0%) | |
低体重児(Low Birth Weight) | YES | 10 (16.7%) | 13 (21.7%) | 5 (8.3%) |
NO | 50 (83.3%) | 47 (78.3%) | 55 (91.7%) | |
妊娠糖尿病(GDM) | YES | 5 (8.3%) | 13 (21.7%) | 5 (8.3%) |
NO | 55 (91.7%) | 47 (78.3%) | 55 (91.7%) | |
足の痙攣(こむら返り) | YES | 35 (58.3%) | 54 (90.0%) | 6 (10.0%) |
NO | 25 (41.7%) | 6 (10.0%) | 54 (90.0%) | |
アプガー指数 | <3 | 2 (3.3%) | 4 (6.7%) | 1 (1.7%) |
3-7 | 14 (23.3%) | 21 (35.0%) | 9 (15.0%) | |
No | 44 (73.3%) | 35 (58.3%) | 50 (83.3%) | |
平均新生児体重 | 3119.4g | 2892.2g | 3250.8g |
足の痙攣(こむら返り)の結果をみると、マグネシウム300mgを1ヶ月間投与したグループCは90%が症状あらわれておらず、グループB(同じ血清マグネシウム値1.9 mg/dl以下)の10%と比較すると圧倒的に改善されていることがわかる。
また、その他の妊娠合併症である妊娠高血圧腎症、子宮内発育不全、早産、低体重児、妊娠糖尿病(GDM)においても、マグネシウムを摂取したグループCのみが圧倒的に有意に改善された結果であることがわかる。
マグネシウムの摂取は、妊婦・妊娠中のこむら返り・足がつる症状だけでなく、妊娠高血圧腎症、子宮内発育不全、早産、低体重児、妊娠糖尿病(GDM)の発生確率を低下させるために有効であると考えられる。
また、新生児の体重増加にも良い影響を与えると考えられる。
アプガー指数とは
1952年に、アメリカ人医学者ヴァージニア・アプガーが導入した評価方法(Apgar score)。生後1分と5分に以下の5つの評価基準について0点から2点の3段階で点数付けをし、7点以上が正常、4-6点を第1度仮死(軽度新生児仮死)、3点未満を第2度仮死(重症新生児仮死)と判定する。
- Appearance – 皮膚の色
- Pulse – 心拍数
- Grimace – 刺激に対する反応
- Activity – 活動性
- Respiration – 呼吸数
妊婦の合併症とマグネシウムに関わる研究はほとんどなかったが、妊娠糖尿病(GDM)、妊娠高血圧症(HTN)、下肢痙攣(こむら返り・足がつる症状)、および妊娠高血圧腎症の発生確率減少に対するマグネシウムの有効性が実証されたことは評価されており、世界の産婦人科にて実践されている。
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著者について
早稲田大学理工学部卒業後、栄養関連の商品開発・情報編集などに15年以上従事。固定観念に囚われず、世界の新しい情報をいち早くキャッチし、既存のデータと組み合わせて新しい付加価値を生み出すことを心がけている。
趣味は、欧米の臨床試験データや研究論文を貪り読むこと。