【はじめに】
主要ミネラルの一つであるマグネシウムと微量元素は生命活動において重要であり必要不可欠な成分です。
ミネラルというのは基本的には食事から経口的に摂取する必要がある栄養素の一種です。
マグネシウムは生体内で様々な反応に関係する必須電解質のひとつであり、生体内ではそのほとんどが骨、筋肉、軟部組織などに存在しています1)。
現在のところ、生体の多彩な症状に対してマグネシウムをいかに上手く活用できるかなどに関する数多くの研究が行われています。
また、近年では多種類のミネラルやビタミンなどを同時に効率よく補うことができるサプリメントによってマグネシウム成分を摂取する人も多く存在しています。
そして、人間の複雑な表情は約20種類ある表情筋によって作られており、各筋肉が個別に動くように指令を送っているのが顔面神経です。
顔面神経は脳から出て側頭骨内という耳の後ろの骨の中を通り、耳の下から出てきて枝分かれしながら各表情筋に分布しています。
一般的に、顔面神経麻痺とは顔面の表情筋(表情を作る筋肉)を支配する顔面神経が麻痺し、顔面のあらゆる動きが悪くなってしまう病気のことです。
この顔面神経麻痺になると顔の表情筋の動きが悪くなり、まぶたが閉じない、食べ物が口からこぼれ落ちるなどの症状が現れます。
今回は、顔面神経麻痺にならないためにマグネシウムのサプリメントを摂取する重要性などについて説明します。
【第1章】顔面神経麻痺になる原因とは?
顔面神経麻痺とは障害される部位に応じて大きく中枢性と末梢性の2種類に大きく分けられます。
頻度としては中枢性顔面神経麻痺が占める割合は1%以下で、ほとんどが末梢性によるものとされています。
通常では、脳の一部である脳幹よりも上位の障害によるものが中枢性、下位の障害によるものが末梢性と定義されており、それぞれで原因が異なります。
例えば、中枢性の顔面神経麻痺では脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、生まれつきの病気であるメビウス症候群などによって起こるとされています。
また、末梢性の顔面神経麻痺の原因は多岐にわたり、ウイルスによるもの(ベル麻痺、ラムゼイ・ハント症候群)を中心に、外傷性(交通事故などによる頭部・顔面の損傷など)、腫瘍性(耳下腺腫瘍など)などが挙げられます。
これらの中で特に多いのがベル麻痺とラムゼイ・ハント症候群と呼ばれるウイルス感染に関連している末梢性顔面神経麻痺です。
ベル麻痺は末梢性顔面神経麻痺の約6割を占めます。
ベル麻痺では、性別に関係なく40歳代に多いと伝えられていて、多くは単純ヘルペスウイルスが原因と考えられています。
一方で、ラムゼイ・ハント症候群では水ぼうそうを引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスが主な原因です。
特に体の免疫力が低下しているときに水痘・帯状疱疹ウイルスが再度増殖して活性化することによって顔面神経に炎症を起こすと考えられています。
顔面神経麻痺の60%を占めているベル麻痺は原因不明とされています。しかし、そのうちの多くにウイルス感染が関わっていることがわかっています。
一般の人でも顔面神経の膝神経節にある知覚神経細胞において、およそ8割の人に単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスが潜伏感染していることがわかっています。
したがって、麻痺が起こっていない人でも大多数は顔面神経の膝神経節にウイルスが潜んでいて、それが一部の人で再活性化して起こるのが帯状疱疹ウイルスによるハント症候群であり、単純ヘルペスウイルスによるベル麻痺と理解できます。
【第2章】顔面神経麻痺にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性
顔面神経麻痺では、原因に対する治療と病態に対する治療が行われます。
発症からの時期によって急性期(発症1か月以内)、亜急性期(発症1か月から約1年まで)、陳旧性(発症約1~1.5年以降)に分けられ、それぞれのフェーズで麻痺に対する治療が異なってきます。
急性期の段階では、ステロイド剤や抗ウイルス薬などによる薬物療法が中心であり、必要に応じて外科的に神経の圧迫をとる顔面神経減荷術が行われます。
ウイルスによる顔面神経麻痺は薬物療法によって治癒することが多いです。
亜急性期の治療では、麻痺の回復促進や後遺症を予防するために積極的なリハビリが行われます。
リハビリ内容は表情筋をほぐすマッサージが主体で、患者さん自身が毎日実践するものになります。
また、顔面神経麻痺の発症にはストレスの関与も見逃せませんので、日常生活においてストレスや不規則な生活習慣などの誘因を出来る限り遠ざけて予防策を講じることが重要です。
そして、必須ミネラルは知られているだけで全てあわせておよそ現在30種類程度存在すると言われており、それぞれが生命体にとって重要な働きをもたらします。
その中でもマグネシウムという成分はカルシウムの作用をコントロールして肩周囲のみならず全身の筋肉を収縮させ弛緩させる役割を果たします。
主に、マグネシウムは筋肉を弛緩させ、カルシウムは筋肉を収縮させる役割を担っています。
マグネシウムの血中絶対値については一般に広く普及して行われている検査項目ではなく、時に異常値が見過ごされやすいファクターですが、一歩間違えれば致命的になることを認識する必要があります2)。
マグネシウムは体内の様々な酵素反応に関与しているため、細胞内の微妙なマグネシウム不足が様々な体調不良に直結します。
その中で、普段からサプリメントを摂取する重要性は徐々に周知されてきました。
成人に関してはマグネシウム(クエン酸マグネシウムや塩化マグネシウム)を概ね400 mg/日程度摂取することが推奨されています。
マグネシウムは、多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに、顔面筋を含めて筋骨格の安定度を正常に保つのに必要な栄養素です。
したがって、顔面神経麻痺を発症しないためにも最低限のマグネシウムを摂取することが重要であり、その手段としてサプリメントを上手く活用する必要があると言えます。
【まとめ(おわりに)】
顔面神経麻痺は、顔面の筋肉を動かす神経に麻痺が生じる病気です。
この疾患は、大きく中枢性のものと末梢性のものに分けられ、中枢性のものは、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などを原因として発症する一方で、末梢性では、主にヘルペスウイルスの再活性化が原因となります。
原因の割合としては、統計学的に末梢性の顔面神経麻痺が大部分を占めています。
顔面神経麻痺は発症してから1週間前後かけて麻痺が進行していくことが多いです。
一方で、私たちのからだの中に確かに存在して色々な生命活動をサポートしてくれているミネラルの中でも、特に現代の人々における心身の健康のために欠かせない代表格が、「マグネシウム」です。
マグネシウムは生体内の約300種類の酵素をサポートする補助酵素としての重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、上手く付き合えば顔面神経麻痺の誘因とされているストレスを軽減できる可能性も秘めています。
したがって、日々の食事内容もさることながら、サプリメントをうまく活用してマグネシウムの日常的な摂取方法を工夫することによって顔面神経麻痺にならないように有意義な生活を送りましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- 中村 忠博, 松永 典子, 樋口 則英, 北原 隆志, 佐々木 均:酸化マグネシウム製剤の腎機能低下患者における血清マグネシウム値への影響. 日本腎臓病薬物療法学会誌.2013年2巻1号.p.3-9.
DOI https://doi.org/10.24595/jjnp.2.1_3
2)磯崎泰介ら:マグネシウム・微量元素の代謝異常.日本内科学会雑誌.2006年95巻5号.p846-852.
DOI https://doi.org/10.2169/naika.95.846
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。