【はじめに】
突然、足の親指のつけ根から猛烈な痛みにおそわれ、1~2時間もすると足の甲が赤く腫れあがり、少し風が吹いただけでもそのわずかな感触で炎症部位に激痛が走ることを経験したことはないでしょうか。
まさにこの症状が痛風の発作です。
痛風の治療あるいは予防には普段からの食事、運動などの生活習慣スタイルの改善を意識する必要があります。
例えば、痛風発作では尿酸値が高い状態が続きますと体内に少しずつ溜まった尿酸成分が結晶となって関節に沈着して激痛が生じることに繋がります。
日々の食事内容について、食品中にナトリウムやカリウム、あるいはマグネシウム、カルシウムを多く含むメニューであるアルカリ性食品を前向きに摂る事で尿酸が尿中に溶けやすくなり結果的に尿酸値を抑えて痛風発作を予防できる可能性があります。
その逆に、豚肉や卵黄、またはまぐろなどの酸性食品を大量に摂り過ぎると尿酸の排泄が低下して体内に尿酸成分が貯留する傾向がありますので、これらの酸性食品の食べ過ぎには十分に注意する必要があります。
最近では、一般的に複数のミネラルやビタミンを同時に補うことができるサプリメントによってマグネシウム成分を摂取する人も多く存在しています。
今回は、痛風発作にならないためにマグネシウムのサプリメントを摂取する重要性などについて説明します。
【第1章】痛風発作になる原因とは?
いわゆる高尿酸血症が長期間持続することにより尿酸ナトリウム一水和物結晶が形成されて関節内や軟部組織に沈着した結果として、痛風関節炎や痛風結節などの臨床症状が出現したものが痛風であると考えられています1)。
痛風では、尿酸成分が関節や腎臓のなかでも結晶となってとどまりますので、関節に激しい痛みを起こして、腎機能障害をも引き起こされる恐ろしい病気と捉えられています。
痛風の患者さんが増加してきた原因としては、食生活を含めて生活習慣の西洋欧米化によるものと考えられています。
現在、痛風患者数は全国で約60万~70万人いると言われています。
さらに、痛風の前段階である高尿酸血症を罹患しているいわば痛風予備軍の人は約600万~650万人存在すると推定されています。
患者・予備軍共に男女比では98%が男性であり圧倒的に男性が発症しやすいです。
年齢的には40歳以上の中年層に多く見られますが、最近では20代の若い人にも痛風発作を起こす人が増えてきました。
これは、現代社会を反映するように「食べ過ぎ」、「ストレスが多く酒を頻繁に飲む」などといった生活習慣の乱れが大いに関係しています。
また、日々の多忙な生活において習慣的に運動を継続できないといった要素も少なからず影響していると考えられます。
痛風は、体内の新陳代謝によってできる尿酸の量によって発症します。
尿酸の体内量はほぼ一定に保たれており、一日に作り出された尿酸量とほぼ同量が毎日排泄されていますが、何らかの原因で体内の尿酸量が増えてしまうと高尿酸血症に繋がります。
尿酸値の正常値は成人男性が血中に4.0~6.5mg/dl、成人女性では3.0~5.0mg/dlと規定されており、7.0mg/dlを超えると高尿酸血症です。
また、血液検査などの数値的には8.5mg/dlを超える状態になると、いつ痛風発作が起きてもおかしくないと想像されます。
高尿酸血症になると、血液中に溶けきれない尿酸が結晶となって関節に沈着し、痛風発作を起こすと言われています。
【第2章】痛風発作にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性
なによりも生活習慣を改善することが最も重要な痛風予防法になります。
まずは、食べ過ぎに注意しながら、規則正しく1日3食をとり、腹八分目を守って、カロリーを多く含む食品や料理は控えめにしましょう。
油を多く使用した料理や菓子類、そして好きなものばかりを続けて食べないように注意する必要があって、出来る限り摂取カロリー数を抑えて肥満を解消するだけで簡単に尿酸値は下がることが期待されます。
そして、肉や魚の内臓や干物にはプリン体が多いので、一気に食べ過ぎないように注意すると同時に、日常生活においてお酒は適量に抑えるようにしましょうね。
初期症状である手足の違和感がある状態で適切な治療を開始すれば、痛風発作を長期にわたって未然に防ぐことが出来ると考えられています。
そして、現在ではいろいろな症状に対してマグネシウムを適用する方法に関して数多くの研究が行われています。
これまでに数々の研究で、マグネシウムが高血圧、脂質代謝異常をはじめとして、痛風発作などの生活習慣病の成因と病態に代謝的に関与している可能性が指摘されてきました2)。
マグネシウムは、人体にとって必須のイオンとされており、日々の健康と生活を支えて維持するのにとても有益な役割を有しています。
最近では必須ミネラルの栄養素である「マグネシウム」が慢性的に摂取不足に陥っている人が増えていると頻繁に聞かれます。
生命の基礎ミネラルとも言えるマグネシウムが不足すると、様々な体調不良を引き起こし、痛風発作の罹患などに繋がる可能性が伝えられています。
日々の中でサプリメントを摂取する重要性は徐々に周知されており、成人に関してはマグネシウム(クエン酸マグネシウムや塩化マグネシウム)を大体400 mg/日程度摂取することが推奨されています。
マグネシウムは、多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助ける栄養素です。
通常では、サプリメントの容器には摂取量程度しか記載されておらず、飲むタイミングはいつが望ましいのか悩む人も多いですが、基本的にはいつどのようなタイミングでサプリメントを飲んでも構いません。
まずは食後に1日の目安量を分けて飲んでみることから開始して、痛風発作を予防する為にも上手にサプリメントを活用されて自分なりに日々の生活に取り込んでいくことをお勧めします。
【まとめ(おわりに)】
かつて「美食家の贅沢病」といわれていた痛風は、大部分は体質によるとされています。
しかし、昨今の経済成長に伴って食生活が豊かになり、食事からのカロリー過剰摂取や運動不足などにより一般の人にまで痛風の発症が認められるようになってきました。
尿酸値が高い状態が続くと多種多様な症状が現れます。
日頃から適正な尿酸値を維持することの重要性を理解いただいて、痛風の治療および予防にお役立ていただければ光栄です。
普段の食生活や運動習慣などを特に注意することによって高尿酸血症や痛風にはなりにくい体になります。
そして、普段あまり意識することがなくても、私たちのからだの中に確かに存在して色々な生命活動をサポートしてくれているミネラルの中でも、現代人の心身の健康のために欠かせないもののひとつが、「マグネシウム」です。
マグネシウムは体内で最も重要なミネラルとも考えられており、マグネシウムは生体内の約300種類の酵素をサポートする補助酵素としての役割も果たしていることは周知の事実です。
したがって、日々の食事内容もさることながら、サプリメントでの栄養摂取をうまく活用してマグネシウムの日常的な取り方を工夫することによって痛風発作にならないように有意義な生活を送りましょうね。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- 西岡弘晶:痛風. 内科 Volume 124, Issue 5, 2321 – 2324 (2019).
- 建田 早百合, 羽根田 俊, 中村 泰浩, 石田 裕則, 小川 裕二, 菊池 健次郎:慢性透析患者の動脈硬化および虚血性心疾患の成因に関わる血中イオン化マグネシウムの意義. 日本透析医学会雑誌. 1999 年 32 巻 3 号 p. 175-184.
DOI https://doi.org/10.4009/jsdt.32.175
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。