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妊婦がマグネシウムを摂取する意義

【はじめに】

御存知の方も多いと思いますが、ミネラル成分は炭水化物や脂質、そしてたんぱく質やビタミンと並んで5大栄養素のひとつと言われており重要な位置づけにあります。

ミネラルそのものは人体の内部では製造することができないために食品など外部から摂取する必要があります。

そもそも、人体にとって必須のミネラルは16種類あると言われ、このうちマグネシウムもカルシウムやカリウムなどと並んで主要なミネラルのひとつであり、厚生労働省が健康増進法に基づいて日本人の食事摂取基準量を規定しています。

現代人の多くが、マグネシウムの慢性的な摂取不足に陥っているとされ、2015年のマグネシウムの食事摂取推奨量では、1日当たりで特に一般女性の場合には290mgとされていますが実際の推定摂取量は210mg前後と約80mgのマグネシウムが日々不足しています。

それぞれのミネラルは、体の機能を正常に保つために様々な役割を担っていますが、中でも生活習慣病の予防や妊婦さんの健康に不可欠なミネラルとして近年注目が高まっているのが「マグネシウム」なのです。

今回は、妊婦さんがマグネシウムを摂取する意義について説明していきます。

【第1章】妊婦がマグネシウムを摂取する意義とは?

お腹の赤ちゃんが成長するためには、お母さんがたくさんの栄養素を摂取する必要があるということは容易に理解できるでしょう。

妊婦さんにおいては、生理的に子宮筋が弛緩して胎児が成長しやすくなる一方で、胃腸などの消化管の運動性が低下して、循環血液量が増えて相対的に水分の再吸収が増大するために便秘になり易くなります。

これらの妊娠初期における妊婦さんの体調不良には、主にビタミンやミネラルの不足も大きく影響していると言われています。

そして、妊娠中に特に重要になる栄養素には、葉酸やビタミンB群、そして鉄分に加えてカルシウムやマグネシウムなどが挙げられます。

妊娠期には、ホルモンの分泌が通常期と異なるため、妊婦さんのカルシウム代謝に大きな影響を与え、胎児の骨成分を作るために母体のカルシウム量が減少して、骨が脆弱になりやすくなります。

また、カルシウム成分の吸収には、マグネシウムもあわせて必要であるため、カルシウムを摂取する際には同時に2:1ぐらいの割合でマグネシウムも意識して摂るようにしてくださいね。

マグネシウムは胎児・胎盤の成長および子宮筋収縮・抑制に必要な栄養素であると考えられています。

特に、妊娠中にマグネシウムを十分に補充することは、胎児の発育遅延や子癇前症の背景に潜む妊娠高血圧症候群の罹患頻度を減少させて、低出生体重児を回避して胎児の出生時体重を増加させる可能性が秘められているという説もあります。

また、マグネシウムは中枢神経に優先的に取り込まれ、赤ちゃんがお腹の中で発育する際にも必要であると思われ、このマグネシウム物質が血液中で不足することによって悪阻が発生するのではないかと考えている学者も存在します。

妊娠時の特に初期に襲ってくる悪阻症状(いわゆる、つわり)の時に白いご飯が食べられなくなる人がいます。

その原因としては、妊娠イベントが味覚神経系に与える影響そのものだけでなくマグネシウムが不足している妊婦さんほど味覚が低下する事が関与していると考えられています。

妊娠初期には、通常であればマグネシウムが細胞内に大量に取り込まれるために、それに反応して血清マグネシウム値が低下する傾向があります。

これと同時に妊娠中期から末期にかけて、空腹時の血糖値が低下しインスリンの基礎分泌量が減少することによって自律神経が変調して副交感神経の活性化が優位となります。

その副交感神経が優位になればなるほど、悪阻症状が強くなることがわかっています。

また、マグネシウムは細胞分裂を行うのにも必要なミネラル成分であると言われます。

一般的に、マグネシウムは350種類以上の酵素の働く調整機構に関与しています。

たとえば、アンモニアを排泄する尿素回路や脂溶性の物質を排泄するのに必要なグルクロン酸産生にも重要な関与をしていると伝えられています。

さらには、妊娠悪阻の時のみならず蛋白尿などを呈する妊娠高血圧症候群の方でもマグネシウムが相対的に不足している傾向があります。

残念ながら、マグネシウムを摂取する意義を普段から意識している妊婦さんは現代ではほとんどおらず、日本人のマグネシウム平均摂取量も以前より減少しているのが現状です。

今一度、胎児の成長を正常に発育させるために、そして妊娠初期の悪阻を出来る限り予防するために非常に重要なミネラルであると考えられているマグネシウムを積極的に摂取するように心がけましょうね。

【まとめ(おわりに)】

容易に想像できることではありますが、妊娠中の栄養補給の有無は胎児の発育に大きな影響を与えます。

実際に、母体内で十分なミネラル成分の栄養をもらって産まれてきた場合とそうでないケースにおいては、身体的ならびに精神的に一定の差があることが知られています。

特に、マグネシウムは、妊娠中に必要量が通常レベルよりも増加する傾向がありますので、意識して摂りたいミネラルの代表格です。

もし、妊婦さんがマグネシウムを多く含んだ食品を取り過ぎたとしても、小腸などで吸収量が調節されて、尿や汗と共に排泄される作用が働くために通常の食事においては過剰症になることはほとんどありませんので心配は無用ですよ。

便秘や悪阻など妊娠期には辛いこともたくさんあるかもしれません。

もし周りにあなたと同じ悩みを抱えている妊婦さんがいたら、十分な水分量やバランスの良い食事を規則正しくしっかり食べて、マグネシウムを代表とするミネラル成分の栄養を摂取するようにぜひ教えてあげてくださいね。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

  1. 恩田威一: 悪阻の時に白いご飯が食べられないのは何故?.相模原市医師会報 58:340-342, 2021.

DOI  http://mag21.jp/contents/630

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。