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塩化マグネシウムと硫酸マグネシウム

【はじめに】

マグネシウム (Mg) と微量元素は生命活動において重要であり必要不可欠な成分です。

マグネシウムミネラルというのは基本的には食事から経口的に摂取する必要がある栄養素の一種です。

マグネシウムは特に心臓などの内臓臓器、そして皮膚細胞や筋肉組織に必要なミネラルであると言われております。

マグネシウムと一言で言っても、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムなどの種類があります。

これらが存在するのはそれぞれマグネシウムイオンが硫酸や塩酸と結合して化合物を作っているために言い換えれば化合物ごとの分類と言えます。

本来であれば、マグネシウムを代表とするプラス電荷を持つ元素というのは、一般的にはそれ単体イオンでは存在できません。

そのため、マイナスの電荷を持つ元素や分子と化合物を作る必要があるのです。

今回は、主に塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの違いについて紹介したいと思います。

【第1章】塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムは何が違うのか?

以前の研究によると、わたしたちの生体内において300種類以上の酵素因子や活性化因子として働いているマグネシウムは、人間の健康と密接にかかわっており非常に重要です。

マグネシウムイオンが硫酸や塩酸と結合して塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムが生成されます。

では、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムにはどのような違いがあるのでしょうか。

マグネシウムの種類

塩化マグネシウムとは、マグネシウムの塩化物であり無機化合物の一種と考えられており、化学式で書くとMgCl2となる白色結晶です。

にがりの主成分のひとつであり、工業的には製塩の副産物として海水から取り出されます。

海水から食塩、塩化カリウムを取り出し、分離した残りが「にがり」であり、古くから我が国の食生活に用いられています。

「にがり」の主成分は塩化マグネシウムであることが知られており、重要な生理作用を有する栄養素であり、人体に必要不可欠なもので、一般的に毒性の高いものではありません1)。

通常であれば、6水和物として市販されており、潮に解ける習性があり、水およびエタノールなどにもきわめて溶解しやすいと言われています。

塩化マグネシウムを主成分とする水溶液は強い苦味をもち、飲み過ぎると下痢になると言われています。

通常の用途としては、例えばにがりとして豆腐作りなどに使用されたり、肥料等の製造、あるいは浣腸液等の制作に使用されます。

塩化マグネシウムをお湯に溶かすと、マグネシウムイオンと塩化物イオンに変化し、こうして作られる塩化物泉の浴用は、挫傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症などに効果的とされています。

一方で、硫酸マグネシウムは化学式で言うとMgSO4 で表現される硫酸とマグネシウムの化合物です。

別名で、硫酸塩マグネシウム、あるいはエプソム塩(エプソムソルト)とも呼ばれます。

無色粉末であり、水にたやすく溶けて、エタノールにはわずかに溶解されます。

無水物については吸湿性のある白色結晶性粉末となり、水分と反応して発熱する特性を有しております。

温泉の一形態である硫酸塩泉などに、硫酸ナトリウムと共に含有されています。

市販されている多くの入浴剤の有効成分は硫酸マグネシウムと炭酸水素ナトリウムであると言われています。

硫酸マグネシウムには体を温める温浴効果があると言われていますので、冬用のアイテムに特に多く配合されています。

また医薬品として、便秘症や低マグネシウム血症、そして子癇、頻脈性不整脈に対して効果的と考えられています。

日本でも硫酸マグネシウムは、既に医薬品として広く使用されていますので、安全性が確認されれば適応拡大としての使用が可能ではないかと思われます。

【第2章】塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムにおける毒性レベルの相違について

硫酸マグネシウムは、しばしばその毒性が議論されます。エプソムソルト入浴など低濃度での使用は全く問題ありませんが、クリームなど比較的濃縮された場合は毒性のレベルが高くなる可能性を示唆しており、妊婦などは注意が必要です。

※引用データ

PubMed

MgSO4 is routinely used in therapeutics despite its toxicity…

硫酸マグネシウム無水の安全データシート2)からの情報によると、本製品自体は燃焼しないものの、特有の危険有害性を有しており、時に火災などによって刺激性又は毒性のガスを発生する恐れがあると言われています。

硫酸マグネシウム物質は、通常の取扱条件においては安定的でありますが、強酸化剤と混触すると激しく反応することがあります。

また、日光が多く、高熱で湿気が高い環境は避けるべきであり、燃焼する際には有害な硫黄酸化物や酸素ガス、そして酸化マグネシウムのヒュームを発生し危険事態になり得ますので注意が必要です。

一般的に、塩化物イオンには保湿効果があり、硫酸イオンには保水効果が存在すると言われています。

どちらのイオンにも効能的に皮膚乾燥症に対する効果が期待されていますが、それぞれで作用機序が異なるわけです。

ここで注意すべき点としては、硫酸イオンについては確かに保水効果がありますが、保湿効果に関しては単に効果が無いということのみならず皮脂を取ってしまう作用があるため、むしろ保湿にとっては逆効果で有害な作用を働くことがあります。

そのため、硫酸マグネシウム(エプソムソルト)を使用する場合には、乾燥する季節や皮脂が少ない人などは、お風呂上りに余分に保湿をする必要があると思われます。

その反面、2015年に米国のメイヨー・クリニックの研究者らが、線維筋痛症患者の生活の質に対する経皮的塩化マグネシウムの効果について報告3)をしました。
※引用

そもそも線維筋痛症とは、慢性疼痛、疲労、うつ病と睡眠障害を主要な特徴とする症候群を指します。

その疾患の主な原因は不明であり、これまでにいくつかの研究で線維筋痛症の患者は細胞内マグネシウム濃度が減少し、マグネシウム濃度と線維筋痛症の症状との間に負の相関があると考えられてきました。

線維筋痛症と診断された女性患者24人に経皮塩化マグネシウム溶液入りスプレー瓶を提供し、4週間にかけて12回手足当たりに4回の噴霧を実施したところ、治療効果の解析では2週目と4週目に線維筋痛症質問票の合計スコアが有意に改善したと言います。

つまり、この予備的研究結果からは手足に噴霧された経皮塩化マグネシウムが線維筋痛患者に有益である可能性があることを示唆しています。

【まとめ(おわりに)】

これまで主に塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの相違点について語ってきました。

毒性レベルという観点からは、まだまだエビデンスが不足しておりこれからも詳細な検証が必要ではありますが、現時点では硫酸マグネシウムが一定の条件下ではより高いと考えられ、一方では塩化マグネシウムの方がより安全域が広く使用できるものと思われます。

いずれにしても、生体にとってマグネシウム成分は必須要素であり、マグネシウムをはじめとするミネラルバランスを意識した日常生活を実践できるように工夫していきましょうね。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

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引用文献

  1. 内閣府食品安全委員会:「にがり」(塩化マグネシウム)の安全性について. 200841日公表.

DOI http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07005000013

2)昭和化学株式会社.安全データシート.

DOI http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/13036150.pdf

  1. Engen DJ, McAllister SJ, Whipple MO, Cha SS, Dion LJ, Vincent A, Bauer BA, Wahner-Roedler DL. Effects of transdermal magnesium chloride on quality of life for patients with fibromyalgia: a feasibility study. Journal of Integrative Medicine 13:306-313, 2015. 

DOI  10.1016/S2095-4964(15)60195-9.

DOI http://www.jcimjournal.com/jim/showAbstrPage.aspx?…

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。