【はじめに】
マグネシウムは、骨や歯を作るのに必要な成分で、健康を維持するために必須の栄養素の一つであると言われています。
例えば、アオノリ、昆布、ヒジキなどの海藻類、大豆、納豆などの豆類、しらす干し、干しエビ、アサリなどの魚介類、アーモンドなどの種実類などにマグネシウムは多く含まれています。
マグネシウムは生体内に置いておよそ半分以上が骨成分に含まれており、不足すると骨から遊離して神経の興奮を抑えたり、体温や血圧を調整したりする働きを持っています。
近年においては、食事によるマグネシウムの摂取不足が実はメタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病を発症させる重要な要因のひとつとしても深く関わっています。
過食や運動不足に伴う肥満傾向やメタボリックシンドロームの罹患増加も新たな課題として浮かび上がってくるなど健康課題意識は時代の変遷と共に大きく変わってきています。
今回は、そんなメタボリックシンドロームを抱えた人がマグネシウムを摂取する意義について説明していきます。
【第1章】メタボリックシンドロームを抱えた人がマグネシウムを摂取する重要性とは?
メタボリックシンドロームとは、通常内臓脂肪が過剰に蓄積されていて、さらに血圧上昇、空腹時の高血糖、脂質の異常値などが複合的にみられる状態のことをいいます。
メタボリックシンドロームの診断は、腹囲から内臓脂肪の蓄積を確認したうえで、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ異常がある場合と定義されています。
そして、メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などと並んで、動脈硬化を悪化させて心臓病や脳卒中の危険性を高めると言われています。
そんなメタボリックシンドロームの予防にマグネシウムが有効ということが、18~30歳の約4600人を対象にして15年間追跡調査した米国の大規模な研究で判明しました。
マグネシウムの豊富な食品を多く摂取する人は、一般的に中性脂肪値が低く善玉コレステロールと呼ばれる高比重リポ蛋白値が高くなる傾向があります。
これまでにマグネシウムの摂取が高血圧症といわゆる2型糖尿病の発症リスクを低下にさせることがさまざまな研究で示唆されてきましたが、メタボリックシンドロームのリスクを低下させることが分かったのはつい最近のことです。
マグネシウムの摂取不足によって虚血性心疾患、高血圧や糖尿病、そして今回の主題であるメタボリックシンドロ-ムを含む生活習慣病になりやすいと言われており、まさにマグネシウム成分は動脈硬化など様々な疾病・病態とも密接に関連しているのです。
必要なエネルギー栄養素であるマグネシウムが生体内で不足すると、食品の体内利用に異常反応をきたし、結果としてメタボリックシンドロームに繋がる肥満症状を襲来させることに繋がります。
数々の生理的な代謝工程を適切に遂行するための生体内Mgが不足すると、インスリンと呼ばれるホルモンと血中ブドウ糖の量がともに飛躍的に増大し、そうして過剰なブドウ糖が脂肪として蓄積されると、肥満の原因となりメタボリックシンドロームに繋がります。
これらの様々な観点からメタボリックシンドロームを抱える様々な患者さんがマグネシウムを摂取することはたいへん重要であると言えるのです。
【第2章】メタボリックシンドロームを抱えた人がマグネシウムを摂取する手段とは?
日本人で推奨されているマグネシウムの1日摂取量は30~49歳の男性でだいたい370mgと言われています。
一方で、厚生労働省が実施した「平成20年国民健康・栄養調査」によると、マグネシウムの平均摂取量は30~49歳の男性では243mgとなっており、平均して120mg以上のマグネシウムが毎日不足していると推測されています。
2008年に米国農務省の共同研究者らは、米国人高齢者のマグネシウム摂取とメタボリックシンドロームの関係性について調査発表しています1)。
その研究によると、マグネシウム摂取量が高齢者でメタボリックシンドロームの有病率と反対の関係が示されたとのことでした。
つまり、高齢者はマグネシウムが豊富な食品である緑色野菜、豆類と全粒穀物を多く摂取することが奨励される運びとなった経緯があるのです。
同様に、マグネシウムの不足を防ぐためにわが国でも日頃の食生活でマグネシウムを多く含む食品を意識して摂る、すなわち伝統的な日本の和の食材を中心とする食生活に改善すると効果的であると考えられますね。
マグネシウムは豆類や野菜類、そして海藻類のみならず食品の中でも、アーモンドやピーナツバターなどにも含まれています。
人間がマグネシウムを取り入れる自然な形は食べ物からだと思います。
しかし、食事だけからの補充が難しい場合は栄養機能食品(マグネシウム)など健康食品やサプリメントを利用することもひとつの手段です。
さらに、近年では経口摂取と比較してマグネシウムの経皮吸収方法は、胃・腸管を介さないという観点からより良好な吸収と少ない副作用によって効果的であると信じている人もいらっしゃいます。
諸外国では既に有名女優やプロスポーツ選手などが日常的にマグネシウムクリームを愛用して直接肌に塗布してメタボリックシンドローム予防のみならずあらゆる症状の改善に貢献している事例が存在します。
近年注目され始めている経皮吸収型クリーム製品などさまざまな種類のマグネシウム製品を組み合わせることで効率的にマグネシウムを摂取できるとも言えます。
【まとめ(おわりに)】
メタボリックシンドロームは日々の運動不足、日常的に偏った食生活、また睡眠不足など生活リズムの乱れやストレス、喫煙歴といった好ましくない生活習慣が積み重なることによって生じます。
特に偏った食事に関しては、メタボリックシンドロームの発症に大きく関わっており、適正カロリー数をオーバーした食事内容や脂質・糖質・塩分の多い食事スタイルには十分注意しましょうね。
また、メタボリックシンドロームは、好ましくない生活習慣によって内臓脂肪が蓄積されてしまうことが大きな原因となっています。
そのために、メタボリックシンドロームにおける治療ではまずは内臓脂肪を減らすことを中心に検討されることになります。
メタボリックシンドロームと診断された人は、医師から禁煙することに加えて生活習慣を改善するよう指導されます。
そして、現代では無意識の内に食物繊維と共にマグネシウムの慢性的な摂取不足に陥っていることがメタボリックシンドロームの新しい発症要因のひとつとして明らかになりつつあります。
したがって、日頃からマグネシウムを摂取することの重要性を認識して、わが国の伝統的な和の食材の良さを再評価し、マグネシウムの十分な摂取を心掛けた食育を行うことが重要であると言えます。
普段からマグネシウムというミネラル要素を意識して経口的のみにこだわらずに経皮的にもあわせて摂取することによって、メタボリックシンドロームの予防と治療に結びつき、長期的な視点で見れば健康長寿につながるものと期待できます。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- McKeown NM, Jacques PF, Zhang XL, Juan W, Sahyoun NR. Dietary magnesium intake is related to metabolic syndrome in older Americans. Eur J Nutr 47:210–216, 2008,
DOI 10.1007/s00394-008-0715-x
DOI http://www.springerlink.com/content/tx125x312k387460/
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。