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マグネシウムはどのように皮膚に好影響を与えるか

【はじめに】

もともと人間の身体には10種類以上のミネラルが必須成分として捉えられており、その中でも人体内において特に主要的な役割を果たしているミネラルと考えられているマグネシウムは、通常では生体内ですべてのエネルギー代謝の場面で重要な要素を担っています。

マグネシウムはよほど不適切な栄養状態に陥らない限りは、あまり血液中に不足しないのと同時に、血中に十分量のマグネシウムがあっても皮膚表面にはほとんど届かずに、すみやかに尿中へ排泄されてしまうことが徐々に明らかになってきています。

そして、微量のマグネシウム成分が皮膚レベルでは欠乏しやすいことが推定され、それに伴って各種の皮膚疾患を引き起こすことが懸念されています。

今回は、主にマグネシウムが皮膚に与える生理的な役割、そしてマグネシウムはどのように皮膚に好影響を与えるかなどを中心に説明していきます。

マグネシウムが皮膚に与える生理的な役割とは?

我々の生体内で300種類以上の酵素因子や活性化因子として働いているマグネシウムは、皮膚状態を含めて人間の健康と密接にかかわっている非常に重要な栄養素です。

マグネシウムは補酵素として普段から300種類以上の酵素の働きを補助しており、体内におけるエネルギー産生機構や栄養素の合成・分解過程、遺伝情報の発現や神経伝達などに深く関与している物質であるのみならず、皮膚のバリア機能にも貢献しています。

そもそも人の皮膚は4つの層で構成されていると言われており、角質層と呼ばれている最も外側の膜の部分は皮膚内部の水分が蒸発して皮膚が乾燥するのを予防する、そして病原体や異物などが侵入するのを防ぐ役割を担っています。

皮膚のバリア機能の調整には、マグネシウムを含む様々な電解質イオンのバランスが重要な働きをすることが判明しつつあります。

一例を挙げると、たとえば普段の生活で過度なストレスがかかると血液中のマグネシウムやカルシウムの濃度はある程度一定に保たれる一方で、皮膚領域では代償的に各々の細胞内におけるマグネシウム濃度の低下が引き起こされます。

そうすると、肥満細胞内においてもマグネシウム濃度の低下が起こり、ヒスタミンが放出されて皮膚にかゆみを生じさせる「易刺激性」の状態に陥ってしまうのです。

特に普段から敏感肌の場合には、皮膚細胞内のマグネシウム濃度が低下していることが多く、それゆえに皮膚の細胞の代謝が落ちて角層成分が薄くなることでますます皮膚のバリア機能が低下する悪循環に繋がってしまいます。

ほとんどが様々な物質に対するアレルギー反応が皮膚に引き起されているわけではなく、いろいろな物質が一気に脆弱な皮膚に進入するために、細胞が悲鳴を生じて掻痒感や痛みを呈する状態になります。

Eczema on right arm, left hand scratching the skin. Girl is wearing a white sleeveless top with flowers and pink pants.

【第2章】マグネシウムはどのように皮膚に好影響を与えるか

皮膚の表皮の中でも特に角層や皮脂膜という表面部分に穴があいて、水分がたくさん失われていく乾燥肌、あるいは水分がどんどん蒸発してしまう皮膚肌を呈した人に化粧水や乳液をたっぷり塗ると激烈な痛みなどが起きる敏感肌を経験すると非常につらいですね。

アトピーなどを代表として極端な乾燥肌を呈する皮膚状態では皮膚表面が非常に敏感になっていますので、普段から保湿を中心としてスキンケアを行うように提唱されており、角層の欠損部に皮膚を保護する化粧水やワセリンを外用することが重要な観点となります。

最近の研究では、皮膚のバリア機能の回復には、マグネシウムをはじめとする各種の電解質ミネラルの生体バランスが重要な働きをすることが示唆されています。

マグネシウムが豊富に含まれる深海の水分摂取は、アトピー性湿疹/皮膚炎症候群を罹患している患者の皮膚症状とミネラルの不均衡を改善して、血清のIgEレベルを低下させることが指摘されています1)。

そして、これまでにバームやクリームなどを始めとする局所的なマグネシウム塗布は皮膚疾患における治療法の最も古い形式のひとつであり、マグネシウムを直接皮膚に塗布し吸収させる経皮的吸収方法の検証が様々に実施されています。

例えば、ウェールズ・カーディフ大学のハード博士・ヒューストン博士はマグネシウムを皮膚外部から局所的に浸透させることで、皮膚の細胞内まで届けることができ、さらに患部を優しくマッサージすることでより高い浸透効果を呈することを示しました。

2016年にはオーストラリアの研究者らが、人間の皮膚に塗布したマグネシウムイオンの透過は毛包によって促進されると題した研究報告をしました2)。

この研究の主な目的は、ヒトの皮膚を透過するマグネシウムイオンの程度と、透過を促進する上での毛包の役割を評価することであり、塩化マグネシウム溶液を局所的に塗布すると、マグネシウムが毛包を通じてヒトの角質層を透過することがわかりました。

そして、マグネシウムクリームは皮膚の保湿作用と共にアトピー性皮膚炎の皮膚状態に悪影響を与える活性酸素そのものを除去する作用も有していることも伝えられています。

【まとめ(おわりに)】

これまで主にマグネシウムが皮膚に与える生理的な役割、そしてマグネシウムはどのように皮膚に好影響を与えるかなどについて語ってきました。

人間の身体の内部ではマグネシウムという成分は通常では多くの酵素を活性化する重要な役割を担っており、皮膚状態を始めとして様々な代謝機構に関与している要素であると言われています。

皮膚のバリア機能の調整にはマグネシウムを含む様々な電解質イオンのバランスが重要な働きをすることが判明しています。

皮膚レベルでの各細胞内におけるマグネシウム濃度の低下が生じることによって皮膚症状が悪化することが指摘されていますので、今後はマグネシウムをはじめとするミネラルバランスを考慮したスキンケアを実践できるように工夫してみましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

  1. Hajime Kimata 1, Hideyuki Tai, Koji Nakagawa, Yoshindo Yokoyama, Hiroshi Nakajima, Yoshinari Ikegami. Improvement of skin symptoms and mineral imbalance by drinking deep sea water in patients with atopic eczema/dermatitis syndrome (AEDS). Acta Medica (Hradec Kralove). 2002;45(2):83-4.

DOI  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12325458/

  1. Chandrasekaran NC, Sanchez WY, Mohammed YH, Grice JE, Roberts MS, Barnard RT. Permeation of topically applied Magnesium ions through human skin is facilitated by hair follicles. Magnes Res 29(2): 35-42, 2016. 

DOI https://soreandtired.com/wp-content/uploads/2018/06/Chandrakanth-Mg-Permeation-through-hair-follicles.pdf

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。