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クローン病を抱えた人がマグネシウムを摂取する意義

【はじめに】

炎症性腸疾患の範疇に入るクローン病では、通常では活動期および寛解期ともにビタミンとミネラルが不足することが多いと言われています。

クローン病とは、簡単に言えば小腸や大腸などの粘膜に慢性的な炎症を長期にわたって引き起こす病気のことです。

本邦では難病の1つとして指定されており、発症率は10万人に約30人程度とされていて、通常男性のほうが女性より2倍程度発症しやすいことも特徴として捉えられています。

そもそも、人体にとって必須のミネラルは16種類あると言われ、このうちマグネシウムもカルシウムやカリウムなどと並んで主要なミネラルのひとつとされています。

微量栄養素であるビタミンやミネラルは、体の機能や調子を整えることや三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質などの消化吸収をサポートするなど生体にとって重要な役割を担っています。

そして微量栄養素は、体内で必要量を自ら生成することができないため、外部からの食事などによる摂取が不可欠となります。

今回は、炎症性腸疾患にひとつであるクローン病を抱える人がマグネシウムを摂取する意義について説明していきます。

【第1章】クローン病を抱えた人がマグネシウムを摂取する重要性とは?

クローン病は1020歳代で発症するケースが多いとされている炎症性腸疾患に位置づけられるひとつの病気です。

病変部位としては、主に小腸や大腸に炎症が現れます。

そのために、腹痛、血便、下痢、体重減少などが代表的な症状となります。

小腸など以外にも消化管と呼ばれる口の中から肛門に至るまでさまざまな部位に症状が現れることがあります。

炎症の活動性が高い時期における治療の方法は、炎症や免疫のはたらきを抑える作用のある薬を用いた薬物療法が主体となります。

仮に腸管壁に穴が開いて消化管穿孔を起こす場合、あるいは腸管が度重なる炎症で狭窄して通過障害が起こるようなケースでは手術が必要となることもあります。

クローン病などの小腸粘膜異常をきたす疾患では、吸収不良症候群を呈することも往々にして存在しており、同時にマグネシウムの吸収障害も併発すると言われています1)。

通常では、腸管叢における吸収面積率の減少によってマグネシウムの吸収不良がみられますが、未吸収の脂肪酸とマグネシウムが結合して糞便中に排泄される過程でもマグネシウムの吸収不良が出現すると考えられます。

クローン病の活動期では、症状がひどくなるために十分に食事が摂取できないこと、あるいは体内への吸収が炎症によって阻害されることなどによって健常時よりもビタミンやミネラルが体内で不足しやすくなります。

また、それぞれのビタミン・ミネラルによって生理的に吸収される消化管の部位が異なることから、実際に炎症が起こっている発生部位や手術部位などによって不足するビタミンやミネラルの種類が変化します。

一方で、炎症が落ち着いている寛解期であっても、日々の食事の偏りや過度な食事制限などによりミネラル類が不足することがあります。

これまでの研究で、マグネシウムなどの微量栄養素が欠乏しているクローン病患者さんでは、入院期間の長期化や手術からの回復に時間がかかることなどが明らかにされています2)ので、普段からビタミン・ミネラルが不足しないよう注意する必要があります。

一般的には、クローン病患者さんにおいては健常人と比較して腹部症状が存在するがゆえに食事からのマグネシウム摂取量が減少するのみならず、病態特有の腸管でのマグネシウムの吸収率が低下する傾向があります。

ですから、クローン病を抱えている患者さんは普段からマグネシウム摂取量が少なくなり過ぎないように意識して、前向きにマグネシウムを摂取することに意義があると考えられます。

【第2章】クローン病を抱えた人がマグネシウムを摂取する手段とは?

クローン病と実際に診断された場合は、その方の症状や重症度に合わせて色々な治療が組み合わされて行われます。

まずは、腸に炎症が起きている部位の刺激を避けるため、絶飲食をしてマグネシウムなどミネラル要素を含む点滴による栄養管理が行なわれることも多いです。

マグネシウムはクローン病を抱えた人の体内にも含まれている重要なミネラル成分です。

一般的には、豆類、緑葉野菜、バナナ、全粒製品などに多くマグネシウムは含有されております。

ビタミンやミネラルは体内で必要量を合成することができないため、食事からの摂取が不足すると様々な症状が現れます。

例えば、マグネシウム成分が不足すると、骨代謝障害、筋肉痙攣、そして倦怠感などの症状が自覚されることが多く認められますが、見た目では判断しにくいものも多いので注意が必要です。

それゆえに、普段からマグネシウムを多く含む魚や果物、野菜、豆類、海藻などをよく食べることがクローン病の症状を改善するために望ましいということになります。

また、近年ではマグネシウムサプリメントが広く普及しており、酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウム、塩化マグネシウムなど色々な形で容易に入手できますので気軽に摂取することが出来る有用なツールとして考えられています。

このような医薬品やそれ以外の経皮吸収型マグネシウムクリームなどを定期的に活用することを検討しているクローン病の方は、マグネシウム摂取に関してこまめにかかりつけ医や周囲の医療スタッフたちと相談するようにしてくださいね。

【まとめ(おわりに)】

クローン病は主に口腔内から肛門末端までに至る消化管領域に炎症を起こし得ます。

あらゆる部位に炎症性変化や潰瘍を形成する病気であり、慢性的な長い経過のなかで症状が良くなったり悪くなったりすることがあります。

症状の再燃を繰り返す特性があるために継続的な治療が必要とされています。

クローン病は一度症状が改善しても、再発を繰り返しながら徐々に病状が悪化していくことが特徴です。

それゆえに、再発を予防するために普段から正しい治療の知識を身に付けて、日々の食事療法を続けていくことが重要です。

また、クローン病患者さんにおいて不足したビタミン・ミネラルは、静脈内注入や経口サプリメントが使われることが一般的とされています。

その後、腹部症状の回復とともに食事内容を改善していき、不足しがちなミネラルの摂取を徐々に増やしていきましょう。

また、過去の数々の調査から、マグネシウム含有型保湿クリームはクローン病の症状に対しても予防効果があることを教えてくれています。

クローン病を持病として抱えている人にとって病気と上手に付き合うためのひとつの選択肢として、食事やサプリメント以外にも経皮的吸収できるマグネシウムクリームを使用することによって症状を軽快させて、健康的で快適な生活を実践しましょう。

三大栄養素に追加してマグネシウムなどのミネラルも主菜・副菜からでも結構ですし、サプリメントやクリームなども上手に活用して最低限は摂取できるようにしたいですね。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

  1. 福田能啓:吸収不良症候群.静脈経腸栄養. 2012 27 1 p. 5-17.

DOI https://doi.org/10.11244/jjspen.27.5

  1. Weisshof R, Chermesh I. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 18(6):576-581, 2015.

DOI  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26418823/

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。