【はじめに】
喘息と聞けば、多くの人は気管支喘息を頭に思い浮かべるかも知れませんが、喘息の中には「咳喘息」と呼ばれる病態も含まれており、この疾患は8週間以上長期に渡って継続する慢性的な咳嗽症状を伴う病気と定義されています。
咳嗽という症状は患者さん方の医療機関を受診する動機として最も頻度が高く、特に持続する咳嗽を訴えて外来受診する患者数増加が指摘されています1)。
そして、マグネシウムはカリウムに次いで細胞質内に多く存在する電解質成分であることが知られており、マグネシウムは 300以上の酵素活性に必要なミネラルです。
生体にとって必須ミネラルと考えられているマグネシウムが豊富に含まれる食事を摂っていると、マグネシウムが有すると考えられている炎症性サイトカイン産生を減少させる効果によって感染症疾患やアレルギー性疾患を予防できる可能性があると言われています。
さらに近年では効率よく簡便にマグネシウム成分を補うことができるマグネシウムサプリメントやマグネシウムクリームという製品を日常的に活用する人も数多く存在しています。
今回は、咳喘息症にならないために普段からマグネシウム製品を取り入れる重要性などについて説明します。
【第1章】咳喘息症になる原因とは?
咳喘息という病気は基本的にはアレルギー素因の存在によって発症しやすく、大量飲酒や過度のストレスなどを含めた数々の要因が複雑に関連することで咳症状が誘発される側面があるという風に考えられています。
一般的に、咳喘息の人の気道は症状が乏しい時にも炎症を起こしていると考えられており、血液中に存在する5種類の白血球のひとつである好酸球が気道に炎症を起こすカスケードに関連していると判明しています。
好酸球が気道に集簇すると、気道の表面を覆っている細胞がはがれ落ちて周囲細胞を過剰に遊走させるサイトカインと呼ばれる物質が放出される結果として、気道領域が様々な刺激に過敏反応して咳症状が出現しやすくなると言われています。
咳喘息という病気は、個々の症例でホコリ・花粉・動物との接触、あるいは気温や気圧の変化、たばこや線香の煙など様々なきっかけを契機として、喉に乾燥や違和感を自覚して咳が長引く傾向が認められます。
【第2章】咳喘息症にならないためにマグネシウム製品を取り入れる重要性
通常ではマグネシウムは日々の生活において例えば飲酒時などにも消費されますし、食事から得られる糖質成分をエネルギーとして燃焼させるときにも大量に使用されることが知られています。
2012年に米国のケース・ウェスタン・リザーブ大学、南フロリダ大学、カリフォルニア大学らの合同研究者らによって、マグネシウムが炎症性サイトカイン産生を減少させる自然免疫調節機序を担っている可能性に関する報告2)がなされています。
その報告によれば、マグネシウムは細胞質に存在するIĸBαと呼ばれるタンパク質の濃度を上昇させて、TLRという受容体を刺激することにより免疫反応時の転写因子であるNF-κBを活性化させて、自然免疫調節の新しいパラダイムを確立したというのです。
したがって、好酸球が気道に集簇して気道表面にサイトカインと呼ばれる物質が放出されることで気道が過敏反応して咳症状が出現すると考えられている咳喘息症に対して、マグネシウムが炎症性サイトカインを抑制して症状改善に効果的に働くことが期待されます。
原則として、マグネシウムなどのミネラルそのものは基本的には体内で十分な量を作ることができませんから、食品などから摂取する必要があります。
マグネシウムはアオノリ、昆布、ヒジキなどの海藻類、大豆、納豆などの豆類、しらす干し、干しエビ、アサリなどの魚介類、アーモンドなどの種実類などに多く含まれていると伝えられています。
ところが、最近では必須ミネラルの栄養素である「マグネシウム」が本邦でも慢性的に摂取不足に陥っている人が増えていると頻繁に聞かれます。
万が一、食事などで十分な量を取れない場合には市販で販売されて容易に手に入るサプリメントを活用する方法もあります。
そして、これまでにオーソモレキュラー医学会はマグネシウム摂取の必要性を度々に渡って強く訴えており、極端な緩下作用を生じることなく適切な用量でマグネシウムを取り入れる方法として経皮マグネシウムを推奨しています。
特にマグネシウム不足が叫ばれている本邦の日本人では、食事やサプリメント以外の方法で毎日でも使用できる経皮マグネシウムクリーム製品が勧められますね。
総合的に考慮すると、咳喘息症を予防するためには普段から意識して食べ物やサプリメント、あるいは経皮吸収型クリーム製品などからマグネシウム成分を摂取する必要性があると言えます。
【まとめ(おわりに)】
通常の風邪症状がいったん治っても、咳が長引く経験をした人の中で特に発症してから8週間以上咳嗽症状が継続する場合には「咳喘息症」の疑いが濃厚であると考えられており、特徴的に咳嗽症状のみが長期に渡って続くことが挙げられます。
特に、布団に入った時や起床時に咳がでやすい方、香水などの匂いやタバコの煙などに敏感であり、寒暖差の影響を大きく受けて同じ季節に咳が長引く経験をしたことがある人では咳喘息の発症リスクが高いと伝えられています。
特に、タバコの煙は気管支を刺激して咳症状を悪化させると言われていますので咳喘息の症状がひどい時には絶対に喫煙しないように心がけましょう。
咳喘息を確実に診断するためには、咳喘息に特徴的な咳か、アレルギーによる気道の炎症はあるか、特に息を吐く時(呼気時)に気道が特異的に狭くなるかなどを指標にして、問診、呼気中の一酸化窒素濃度測定、呼吸機能検査などを実施することが有用です。
そして、我々の体内ではミネラル成分が様々な身体機能を正常に保つために多彩な役割を担っていますが、中でも近年において生活習慣病を含めて咳喘息症の予防対策として重要な位置づけとして考えられているのが「マグネシウム」です。
もし周りに咳喘息症に関して心配している人がいたら、十分にバランスの取れた食べ物を毎日の中で規則正しく取り入れることを推奨すると同時に、特にマグネシウムを中心としたミネラル成分の栄養素を前向きに摂取するように教えてあげて下さいね。
日々の食事内容やサプリメント栄養、経皮吸収型クリームなどを上手に活用してマグネシウムの摂取方法を工夫することで咳喘息症にならないように実り多い有意義な生活を送りましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
1)新実彰男:慢性咳嗽の病態,鑑別診断と治療―咳喘息を中心に―
DOI https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/9/105_1565/_pdf
2)Sugimoto J, Romani AM, Valentin-Torres AM, Luciano AA, Ramirez Kitchen CM, Funderburg N, Mesiano S, Bernstein HB. Magnesium decreases inflammatory cytokine production: a novel innate immunomodulatory mechanism. Journal of Immunology 188:6338-46, 2012.
DOI 10.4049/jimmunol.1101765.
DOI http://www.jimmunol.org/content/188/12/6338
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。