【はじめに】
水疱性類天疱瘡は、ヒトの表皮基底膜部の抗体出現によって表皮下水疱を生じる自己免疫疾患であると言われています1)。
水疱性類天疱瘡は、本邦において最も頻度の高い自己免疫性水疱症であると認識されていて、本疾患は高齢者女性に好発して、近年増加傾向を認めており、患者の平均発症年齢は80歳前後と報告されています。
そして、マグネシウムは生体にとって必須の金属であると昔から伝えられており、マグネシウム元素が欠乏すると皮膚疾患を惹起しうると考えられていました。
このような観点からも生体の微妙な恒常性の維持にとって、マグネシウムは広範囲にわたって深く機能していると言えます2)が、残念ながら現代の日本人は代表的ミネラルであるカルシウムやカリウムだけでなくマグネシウムも慢性的に不足しています。
昨今では多種類のミネラルやビタミンなどを同時に効率よく補うことができるサプリメントによってマグネシウム成分を摂取する人も多く存在しています。
近年では、サプリメントなどの健康食品の消費量は年々増加しており、いまや約6割もの人が利用していると言われています。
今回は、水疱性類天疱瘡にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性について説明します。
【第1章】水疱性類天疱瘡とは?
水疱性類天疱瘡は、全身の皮膚や性器を含む粘膜に水ぶくれやただれなどの症状が生じる自己免疫が関連した疾患であり、難治性のことが多いと認識されています。
年間の発症率は 10 万人当たり 0.2~3 人とされており、その死亡率は国によって若干異なるもののおおむね5~40%程度と言われており、厚生労働省が指定難病に認定しています。
水疱性類天疱瘡の明確な発症要因についてはいまだに明らかにされていませんが、糖尿病や神経・脊髄疾患との関連性も指摘されてきました。
水疱性類天疱瘡は、皮膚に存在する「17型コラーゲン(別名:BP180タンパク)」や「BP230タンパク」に対する自己抗体が出現することによって、体幹や上下肢を含む全身の皮膚や粘膜部位に水ぶくれやただれ症状、赤い発疹である紅斑所見が生じる病気です。
類天疱瘡に認められる水疱は、その内部に液体成分が充満して緊満感が強く、水疱そのものが軽微な外力で簡単に破れてびらんや潰瘍性病変を形成して、掻痒感や紅斑が出現すると言われています。
本疾患における水疱病変は水風船のような構造を呈していますが、適切な治療によって比較的治りやすい病気であると認識されており、基本的には他の人には感染するとは考えられていません。
また、近年では2型糖尿病の経口治療薬として本邦でも広く汎用されているDPP-4阻害薬が、その服用患者の一部に水疱性類天疱瘡と呼ばれる難治性の自己免疫疾患を来す場合があると指摘されています。
【第2章】水疱性類天疱瘡にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性
水疱性類天疱瘡で生じた皮膚病変は外力によって病状が悪化することが多いため、外的な刺激を回避することが重要であるとともに、患部を不衛生な環境で放置すると感染症を併発するために局所的な清潔を保つことも大切です。
水疱性類天疱瘡は、基本的に自己抗体を原因にして発症する病気であるため、免疫調整目的にステロイド投与を行い、特に重症であればパルス療法と呼ばれる大量のステロイドが必要になることもあります。
それ以外にも、免疫グロブリンと呼ばれる血液製剤を大量投与する治療方法が選択されることもあります。
そして、マグネシウムは、多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに、骨形成や筋骨格の安定度を正常に保つのに必要な栄養素です。
近年になって特に注目を浴びている「サプリメント」は、ある成分が濃縮されて、錠剤やカプセルなど、通常の食品とは違う形をして作られた製品をいいます。
ある調査によるとサプリ製品を購入する際に重要視する点として、過半数以上が「効果や有効性」と答えていたそうですが、その効き目が顕著に出現するまでの期間というのは個人差のみならず、サプリの種類や目的によっても異なりますので念頭に置いておきましょう。
最近では必須ミネラルの栄養素であるマグネシウム成分が慢性的に摂取不足に陥っている人々が増加しているようですが、普段からサプリメントを摂取する利点などについては少しずつ周知されてきています。
ですから、水疱性類天疱瘡にならないためにも最低限のマグネシウムを摂取することが重要であり、その手段としてサプリメントを上手く活用する必要があると考えられます。
【まとめ(おわりに)】
水疱性類天疱瘡は、掻痒感を伴う発疹や水疱を生じる病気であり、70歳前後の高齢者に多くみられる難治性の自己免疫疾患であるとともに、患者さんの日常生活に大きく支障をきたす可能性が懸念されているために発症予防に努めることが重要です。
水疱性類天疱瘡の病変を放置して病状が進行すると、治癒にまでより一層の時間を要すると言われているため、セルフケアを実践しても皮膚の状態が改善しない場合は早急に病院や診療所を受診しましょう。
そして、私たちのからだの中に確かに存在して色々な生命活動をサポートしてくれているミネラルの中でも、特に現代の人々における心身の健康のために欠かせない代表格が、「マグネシウム」であると言われています。
マグネシウムは生体内の約300種類の酵素をサポートする補助酵素としての重要な役割を果たしていることは周知の事実です。
現在のところ、製薬会社や食品会社から色々な微量元素のサプリメントが販売されており、特にマグネシウム成分を含んでいるサプリメントでは酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウムなどの化合物として多彩な形で市販店などにおいて入手することが出来ます。
したがって、日々の食事内容を見直しながら、サプリメントをうまく活用してマグネシウム成分の摂取方法を工夫することによって水疱性類天疱瘡にならないためにも有意義な生活をみんなで過ごしましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
1)小寺 玲美ら:糖尿病治療中に水疱性類天疱瘡を発症した高齢 2 型糖尿病症例の
臨床的特徴について―主に DPP-4 阻害薬との関連について―.日老医誌.56:43―50.2019.-
DOI https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/56/1/56_56.43/_pdf/-char/ja
2)福生吉裕:マグネシウム製剤の臨床治療への有効性. 東京未病研究会雑誌. 1995 年 1 巻 1 号 p. 20-28.
DOI https://doi.org/10.11288/mibyou1995.1.20
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。