マグネシウムクリームとアトピー

【はじめに】

マグネシウム(Mg)は生体にとって必須の金属であり,Mgの欠乏は実験的に皮膚炎を惹起するという報告もあります1)。

マグネシウムはアルコール依存症や摂食障害などによって不適切な栄養不足の食生活をしない限りは、あまり血液中に不足することは少ないということが判明してきました。

それと同時に、血中に十分量のマグネシウムがあると、わざわざ経口的にマグネシウムを内服して摂取しても皮膚には届かずに、すみやかに尿中へ排泄されてしまうことも段々と明らかになってきています。

つまりこれらの知見を照らし合わせてみると、ごく微量のマグネシウム成分が皮膚レベルで欠乏するために、アトピー性皮膚炎が引き起こされるのではないかと推定されているのです。

今回は、皮膚の生理的機能やマグネシウム、そしてマグネシウムクリームとアトピー性皮膚炎との関連性をご紹介いたします。

【第1章】皮膚の生理的なバリア機能とマグネシウムとの関係は?

最近の研究では、皮膚のバリア機能の回復には、マグネシウムやカルシウムなどの各種の電解質イオンのバランスが重要な働きをすることが、明らかになってきました。

例えば、精神的ストレスが生体内に活性酸素を生じさせることは有名な話ですが、同時に血液中からのマグネシウムやカルシウムの排出を促進することも判明してきました。

仮に血液中のマグネシウム濃度が低下すると、迅速に正常へと補正するために、骨と細胞内から血液中にマグネシウムの移動が行われます。

それらの反応によって、血液中のマグネシウムやカルシウムの濃度は正常には保たれますが、一方で皮膚レベルでは各種細胞のマグネシウム濃度の低下が生じることに繋がります。

その結果として、肥満細胞内のマグネシウム濃度の低下が起こり、同細胞よりヒスタミンが放出されて皮膚にかゆみを生じさせ、表皮角化細胞の代謝が低下して皮膚バリア機能の回復が遅くなります。

これらの状態を皮膚の「易刺激性」と呼んでいます。

最近では、皮膚レベルでマグネシウムが不足すると肥満細胞のサイクリックAMP (cAMP)が低下することで肥満細胞という皮膚に存在する細胞からヒスタミンが非常に放出されやすくなることも判明してきました。

同様の主旨の内容に関して、最近になって大手化粧品会社が乾燥肌や敏感肌について興味深い発表をしました。

そもそも皮膚の表皮、特に角層や皮脂膜という皮膚の表面をカバーする部分に穴があいて、どんどん水分が失われていく状態が乾燥肌であり、様々な外用剤や化粧品が角質部分をどんどん通過して皮膚を刺激する状態を敏感肌と呼んでいます。

基礎実験的に作った乾燥肌においては皮膚のバリア機能が一般的に低下しますが、皮膚のバリア機能の回復を塩化マグネシウム、塩化カルシウムが促進したというのです。

また、セロテープを何回も皮膚に貼っては剥がすことを繰り返して作った実験的敏感肌では、表皮上層にあったマグネシウム成分が消失したというものでした。

これらのことからも皮膚のバリア機能とマグネシウムとの間には密接な関係性があることが容易に想像できますね。

また、アルドステロンというホルモンが過剰に腎臓に作用して低カリウム血症となり、同時にマグネシウムの尿中排泄量も増加して低マグネシウム血症を呈するBartter症候群という病気があります。

そして、そのBartter症候群を有する方が長期にわたる長時問の温泉浴により発汗量が持続的に増加してアトピー性皮膚炎に陥った症例も報告されています2)。

 

【第2章】効率よくアトピーが改善できるマグネシウムクリームの効果を教えます!

乾燥肌、敏感肌を防ぐ第一歩は保湿を中心としたスキンケアです。

アトピーなどの極端な乾燥肌を呈する皮膚状態では皮膚表面が非常に敏感になっていますので、まずはなるべく皮膚を保湿して保護するような成分を外用するようにしましょう。

まず角層の欠損部に皮膚を保護する化粧水やワセリンを外用することで、皮膚のバリア機能がある程度回復するでしょう。

さらに、その上からビタミンCやマグネシウムクリームを代表とする保湿クリームなどを外用しましょう。

なぜならば、乾燥肌や敏感肌に代表されるアトピー性皮膚炎の方では皮膚領域においてマグネシウムやカルシウムなどの電解質不足がおこっており、これらを有効的に補正することで皮膚のバリア機能が改善することが期待されているからです。

ある皮膚科専門のクリニックではL_アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩という持続活性型ビタミンCの配合剤をアトピー治療に使用しています。

このビタミンC外用剤の最大の利点は、何よりも皮膚のバリア機能を促進するマグネシウム成分を含んでいる所と言えるでしょう。

皮膚の落屑状態を呈するアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、ビタミンCを含むマグネシウムクリームを処方した結果、アトピー性皮膚炎用のステロイドを含まない外用剤よりも掻痒感が軽快したという人が多く認められたこともあります。

マグネシウムクリームは皮膚の保湿作用だけでなく、それと共にアトピー性皮膚炎の皮膚状態に悪影響を与える活性酸素そのものを除去する作用も有しています。

【まとめ(おわりに)】

これまで主にアトピー性皮膚炎とマグネシウムクリームについて語ってきました。

過去の数々の研究から、マグネシウム含有型保湿クリームは敏感肌や乾燥肌に対して保湿効果があることを教えてくれました。

これからは、マグネシウムをはじめとするミネラルバランスを考慮したスキンケアを実践できるように工夫していきましょうね。

万が一、アトピー性皮膚炎の人が普段よりも皮膚がより乾燥したり痒いなどの自覚症状を感じる際には、マグネシウム成分を経口的に食事摂取するだけでなくマグネシウムクリームを上手く活用して皮膚からも補充するように心がけましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

 

引用文献

1)花田勝美ら:ヘアレスラットにおけるマグネシウム欠乏性皮膚炎の組織学的観察.日本皮膚科学会雑誌.1988年.98巻8号.p797.
2)田村耕成ら:長期にわたる長時間の入浴により偽性 Bartter 症候群および偽性副甲状腺機能低下症を生じたアトピー性皮膚炎の一例. 日本温泉気候物理医学会雑誌. 2002 年 65 巻 4 号 p. 194-198.

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。