マグネシウムはどのように身体に影響するのか

【はじめに】

もともと人間の身体には10種類以上のミネラルが必須成分として捉えられており、その中でも人体内において特に主要的な役割を果たしているミネラルと考えられているマグネシウムは、通常では生体内ですべてのエネルギー代謝の場面で重要な要素を担っています。

本邦では、実際のところ日常生活内で積極的にマグネシウムを普段から摂取している方は少ないと言われており、これまでの研究ではマグネシウムの摂取量が大幅に減少することで色々な病気を抱えるリスクが上昇することが指摘されてきました。

そんなマグネシウムですが、そのミネラルそのものは身体のなかで約半数近くがリン酸塩や炭酸塩などの化合物として骨に沈着しており、残りのおよそ4割は筋肉や脳、あるいは神経部位に存在すると言われています。

マグネシウムは、その他のミネラルで代表格であるカリウムの次に細胞内液に多く充満しており、反対に血液中など細胞外液には1%未満のみしか存在していません。

人間の身体の内部では、マグネシウムは多くの酵素を活性化する重要な役割を担っているために、生命維持に必要な各種の代謝機構に関与している重要なファクターです。

今回は、一般的にマグネシウムがどんな物質であり、どのように身体に影響しているのかを簡単に説明していきます。

【第1章】マグネシウムはどのように身体に影響するのか?

通常では、人の身体の中には、大体25g程度のマグネシウム成分が存在しています。

マグネシウムはすべての細胞や骨に広く存在していて、約300種類に渡って生体にとって必要な酵素反応に関わっていると考えられています。

マグネシウム自体は血液中に約1%程度しか存在していませんが、血中におけるマグネシウム濃度は血中カリウム濃度など他の電解質とも密接に関わっており,重要な生体因子であると言われています1)。

マグネシウムはそれだけ大切な物質ですので、身体内において特に血中のマグネシウムが不足してしまうと骨から代償的にマグネシウムを取り出して常に血液中におけるマグネシウムの量を一定レベルに保持しようとします。

こうしたマグネシウムが関与している生理的な役割としては、例えば蛋白質の合成や神経伝達物質の制御などが挙げられ、他にも心機能状態の維持、筋収縮などにも重要な関与をしていると言われています。

ですから、マグネシウムが生体内で足りなくなると低マグネシウム血症が引き起こされるリスクが高まり、さらに低カルシウム血症が助長されて、骨粗鬆症や冠動脈狭窄などの虚血性心疾患、あるいは筋肉部位の痙攣や不整脈、そして下痢や便秘などの腹部症状が現れます。

人体は約60兆個の細胞から成立していますが、そのひとつひとつの細胞内外にカルシウムとマグネシウムが適切な割合で存在することがたいへん重要な鍵になっています。

これらの電解質バランスが保持されているおかげで、心臓や大血管の緊張強度を保つことができ、心臓が正常に収縮して駆動できているのです。

さらに、骨の健康を保つのには、マグネシウムが必要不可欠な存在と言えます。

骨は基本的にはミネラルと骨気質などの材料で構成されています。

そして、骨代謝に貢献するミネラルは主にカルシウムとリン酸のヒドロキシアパタイトがあり、これらの中に微量のマグネシウムが混入していて、骨強度や骨密度を保つのに役立っていることが知られています。

日本では火山灰土が多く分配されているために、もともとミネラル資源が少なくなっているのみならず、現代日本人は多種多様なストレスを抱えやすい生活を送っています。

また、普段からアルコールをたくさん飲む習慣がある人も少なからずいらっしゃるでしょうし、精製された白米や加工パンを食べる機会が増加しているため、日常的にマグネシウム成分を摂取するチャンスが足りなくなっている懸念があります。

一方で、そんなマグネシウムの摂取量とは無関係に生体内では自然とマグネシウムの吸収率を変化させ、尿中排泄量を増減させることで体内量を調整しています。

ですから、マグネシウムを摂取する際には、単純に食べ物の中に含まれるマグネシウム量だけに着目するのではなく、生理的な吸収工程や排泄機構に関わる複雑な他因子についても考慮する必要があると言えるでしょう。

過去の厚生労働省の栄養調査によると、マグネシウムの平均摂取量は成人男性では270mg、成人女性では230mgであると言われ、日々の食品からの摂取量だけでは50100mg程度のマグネシウム量が毎日に及んで不足している実態が推察されます。

万が一にもストレスを多く抱えているときなどはミネラルの消費量も比例して増大しますので、特にマグネシウムを意識して摂るように普段から心がけましょうね。

マグネシウムの摂取は食事以外に市販のサプリメントでもある程度は期待できますが、マグネシウムのサプリメントは大体緩下作用があり敬遠されがちですので、最近ではマグネシウムを局所的に吸収するのが効率的であるという考え方も普及しつつあります。

【まとめ(おわりに)】

マグネシウムは私たちの身体にとってなくてはならない必要なミネラル成分であり、主に骨や歯を作るのに役立つ栄養素であると同時に、心臓や脳機能のみならず筋肉部位を正常に働かせるうえで重要な鍵を握っている物質です。

そして、マグネシウムは骨や筋肉の健康維持だけではなく血糖値や睡眠状態などを含めて我々の健康領域に広く深く関わっています。

マグネシウムはほぼ生体内では作られない栄養素であるために、おおかた食品などから取る必要があります。

マグネシウムを適正な範囲で摂取することで、メタボリック症候群にも良好な結果を及ぼすことも以前の研究などで報告されてますので、意識して取り入れることが大切ですね。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

1)貝原俊樹ら:低カリウム血症, 低マグネシウム血症により多型性心室頻拍, 心肺停止となった1.心臓. 2015 47 SUPPL.1 p. S1_50-S1_54.

DOI https://doi.org/10.11281/shinzo.47.S1_50

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。