まだ間に合う!?妊娠糖尿病を予防するためにやっておくべきこと

【はじめに】

妊娠糖尿病という病気は、普段聞き慣れない疾患かもしれませんが「妊娠中に初めて診断された糖代謝異常」のことを指します。

妊娠糖尿病とよく類似していて異なる病気として、妊娠前から糖尿病と診断されている方が妊娠した場合には、糖尿病合併妊娠と呼んでおります。

日本産科婦人科学会によると、統計学的に妊婦さん全体の約10%程度は妊娠糖尿病と診断されると伝えられています。

妊娠糖尿病を放置すれば、母体のみならず胎児にも悪い影響が出現しやすいと言われており、こまめに妊婦健診を定期的にチェックしてもらうことが重要な視点となります。

そして、人体内で数えて7番目に多いミネラルであるマグネシウム(元素記号:Mg)は、生体内におけるすべてのエネルギー活動の場で重要な役割を持っていると考えられています1)。

普段からミネラル摂取を格段に意識している妊婦さんは皆目ほとんどいないと考えられており、特に現在のところでは日本人のマグネシウム平均摂取量も減少していますが、妊娠糖尿病を予防するためにマグネシウムは非常に重要な要素であると考えられています。

マグネシウムは昔ながらの日本食では豊富に摂取できるものが多いとされていますが、その一方で複数のミネラルやビタミンを同時に補うことができるサプリメントによってマグネシウム成分を摂取する人も最近では散見されます。

今回は、妊娠糖尿病にならないためにマグネシウムのサプリメントを摂取する重要性などについて説明します。

【第1章】妊娠糖尿病になる原因とは?

一般的に、食べ物が生体内で消化吸収されると自動的に血糖値が上昇し、その反応に伴って膵臓から分泌される「インスリン」とよばれるホルモンによって血糖値は低下するように制御されています。

通常、妊娠すると胎盤からインスリンの役割機能を抑えるホルモンが分泌されるためにインスリンが非妊娠時よりも効きづらくなり相対的に血糖値が上昇しやすくなります。

何らかの要素でインスリンの効果が悪くなる、あるいはインスリン自体の分泌機能が不十分になるのに加えて特に妊娠後半期に出現しやすい生理的なインスリン抵抗性の状態になると体内の血糖値コントロールがうまく制御できなくなる結果、血糖値が高くなります。

特にもともと肥満体形の女性、家族に糖尿病に罹患している方がいるケース、35歳以上での高年齢時の妊娠初産、そして以前に概ね4000g以上の大きな巨大児を出産した経験がある妊婦さんなどは、健常者よりも妊娠糖尿病を発症するリスクが高いと言われています。

さらに、インスリン分泌能が諸外国と比較して低い傾向があるというネガティブ因子を含めた遺伝的背景を有する日本人が高脂肪食を摂取して、日々の運動量が低下し、晩産化になってしまったことが妊娠糖尿病患者を増加させた主たる要因であるとも考えられます。

【第2章】妊娠糖尿病にならないためにマグネシウムサプリメントを摂取する重要性

通常の妊婦健診の過程では、主に妊娠初期と妊娠中期に血糖値のスクリーニング検査が施行されて、特に糖代謝異常が疑われた場合には妊娠糖尿病などの正確な診断のために更なる精密検査が実践されることになります。

妊娠糖尿病の症例では、胎児が過剰に発育する、あるいは妊娠高血圧症候群、新生児低血糖や新生児黄疸を発症するなどのリスクが高くなり帝王切開に至る確率も比較的高値であることが知られています。

また、妊娠糖尿病を発症した妊婦さんは産後に糖尿病が改善したとしても、その先にインスリン抵抗性を主病態とする2型糖尿病を発症する可能性があるために出産後も食事や運動などの生活習慣スタイルに注意すべきであると考えられています。

そして、植物性タンパク質をとると妊娠糖尿病のリスクが低下するという研究が過去に米国の国立小児保健ヒト発達研究所のウェイ・バオ氏らによって発表され、彼らによると食事内容に豆類や野菜を積極的に取り入れることが重要であると強調しています2)。

具体的には、赤身肉など動物性たんぱく質の過剰摂取が長期的視点から体重増加を引き起こして2型糖尿病などの危険性を高めると考えられました。

その一方で、食物繊維やマグネシウムが豊富に含まれている豆類やナッツ類、野菜中心の食生活を送ると食後の血糖値の上がりやすさを示すグリセミック・インデックスが低くなったというのです。

通常の周産期過程では、妊娠初期にはマグネシウムが細胞内に大量に取り込まれるために、それに反応して血清マグネシウム値が低下する傾向があります。

原則として、マグネシウムなどのミネラルそのものは基本的には体内で十分な量を作ることができませんから、食品などから摂取する必要がありますが、食事などで十分な量を取れない場合には市販で販売されて容易に手に入るサプリメントを活用する方法もあります。

通常では、サプリメントの容器には摂取量程度しか記載されていないことが多いため、飲むタイミングはいつが望ましいのか迷ってしまう妊婦さんも多いです。

基本的には、いつどのようにサプリメントを飲んでもいいのですが、まずは食後に1日の目安量を分けて飲んでみることをお勧めします。

総合的に考慮すると、妊娠糖尿病を予防するためには、普段から意識して食べ物やサプリメントなどからマグネシウム成分を摂取する必要性があると言えるでしょう。

【まとめ(おわりに)】

近年、本邦で急増している「妊娠糖尿病」は、一般的に中年層や高齢者が罹患する通常の糖尿病とは一線を画して定義が異なっており、いわゆる妊娠中に初めて診断された「糖尿病に至っていない糖代謝異常」のことを意味します。し

ところが、妊娠糖尿病患者が増加してきた背景を考慮した際には、日本人特有の遺伝的体質や欧米化を含めた生活様式の変化にも目を向けてみれば通常の糖尿病の原因とも重複するリスク因子が多いことに気付かされます。

また、妊娠中の過度な体重増加そのものが妊娠糖尿病を発症しやすくなる要因だと疑われていることからも、本疾患を未然に予防するために日常的に栄養バランスのよい食事や体調に合わせた適度な運動を実践して過剰に体重が増えないように認識することが重要です。

妊娠糖尿病自体を事前予防する、そして早期発見に繋げるためにも妊婦健診をきちんと受診して産婦人科医のもとでしっかりと周産期管理を受けるように意識しましょう。

そのような背景がある中で、特にマグネシウムは妊娠中に必要量が通常レベルよりも増加する傾向がありますので、意識して摂りたいミネラルの代表格です。

もし、妊婦さんがマグネシウムを多く含んだ食品を取り過ぎたとしても、小腸などで吸収量が調節されて、尿や汗と共に排泄される作用が働くために通常の食事においては過剰症になることはほとんどありません。

もし周りに妊娠糖尿病に関して悩みを抱えている妊婦さんがいたら、十分な水分量やバランスの良い食事を規則正しくしっかり食べて、マグネシウムなどのミネラル成分の栄養を摂取するように教えてあげてください。

日々の食事内容やサプリメント栄養をうまく活用してマグネシウムの摂取方法を工夫することによって妊娠糖尿病にならないように実り多い有意義な生活を送りましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

  1. 藏前尚子:2型糖尿病におけるマグネシウムの役割. JICD, 2015, Vol. 46, No. 1.p56-61.

DOI https://www.icd-japan.gr.jp/pub/vol46/17-vol46.pdf

  1. Wei Bao, Katherine Bowers, Deirdre K. Tobias, Frank B. Hu, Cuilin Zhang: Prepregnancy Dietary Protein Intake, Major Dietary Protein Sources, and the Risk of Gestational Diabetes MellitusDiabetes Care 2013 Feb; DC_122018.

DOI  https://doi.org/10.2337/dc12-2018

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。